Japanese
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特集 脳のシンポジウム
主題:生体の情報処理
神経細胞レベルにおける興奮と抑制の機構
Mechanism of Excitation and Inhibition at Cellular level
内薗 耕二
1
Koji Uchizono
1
1東京大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.551-566
発行日 1967年10月25日
Published Date 1967/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431906421
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I.相反神経支配
1.自律神経系
自律神経系における興奮性神経と抑制性神経の区別は比較的古くから知られていた。とくに心臓に対する交感神経と迷走神経の作用は,その作用機序がまつたく逆の関係にあることから,これらの神経については比較的早い時代からよく研究されている。心臓に対して交感神経は興奮性に働き,迷走神経は抑制性に作用する。しかし,他の臓器,たとえば小腸に対するこれらの神経の作用は,心臓の場合と異なり交感神経が抑制的に,迷走神経が興奮性に働くことも古くから知られている。したがつて,いずれの神経を興奮性,抑制性ニューロンときめることはできない。同一の神経線維の末端がそのtargetorganによって作用をまつたく逆にしていることは興味ぶかいことである。われわれの研究の主要目的は体性神経系における興奮と抑制の機序を解明することである。とくに電気生理学的所見と,微細構造との関係を確立しようとすることを当面の目標としている。
幸いにして,心筋に対する自律神経系の作用は電気生理学的によくしらべられており,中でもHutterとTrautwein1)2)の微小電極による研究は,心臓支配神経の相反作用をきわめて的確にとらえることに成功している。すなわち図1に示すように,細胞内電極をpacemaker付近の心筋細胞に刺入し,膜電位を測定できるようにしておく。
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