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特集 慢性進行性神経疾患・1
中毒
中毒領域の展望—有機水銀中毒とSMONについて2〜3の問題点
Toxic diseases of nervous system: Problems on organic mercury poisoning and subacute myelo-optico-neuropathy
椿 忠雄
1
Tadao TSUBAKI
1
1新潟大学脳研究所神経内科
1Department of Neurology, Brain Research Institute, Niigata University
pp.841-843
発行日 1972年10月10日
Published Date 1972/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903434
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中毒性神経疾患は最近に至るまで,神経疾患の中で重要な位地を占めるものではなかった。患者の数も少なく,特異な状況下にのみ発生したものが多いためもあり,比較的少数の医師や医学者の興味の対象であった。
しかしながら,現在はこれが神経学領域における主要研究主題の一つであることは確実である。このようになった理由の一つに,有機水銀中毒(水俣病),キノホルム中毒(SMON),一酸化炭素中毒(炭塵爆発)などのような公害,医療災害,労働災害がおこり社会問題となったことが挙げられる。今や学問が社会問題に目をつむり象牙の塔にこもることが許されないという認識を持つ学者も多く,このような問題に積極的に取り組む姿勢が学界に強くなったのであろう。このような趨勢の下に中毒の問題が新しく脚光を浴びるに至ったのであるが,研究が進むにつれて今まで知られなかった新しい事実が次々に見出され,とくに従来神経疾患研究の強固な壁となっている変性神経疾患の原因究明の手掛りをえられるのではないかとの新しい希望が出たのである。もとよりこの強固な壁は容易には打ち破れぬであろうが,臨床神経学者の夢があるいは実現するかも知れないということは何ともすばらしいことである。
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