視座
手の触覚
伊藤 鉄夫
1
1京都大学整形外科
pp.105
発行日 1977年2月25日
Published Date 1977/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905471
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皮膚知覚は手掌において最も高度に発達している.痛覚,触覚,温覚,冷覚のための特有の受容器があり,手掌では密に分布している.このうち触覚受容器はmechanoreceptorとして高度に発達しており,すばらしく精巧な構造をもつている.これには2種あり,第1のものは持続的圧刺激を正確な局在をもつて識別する受容器(Merkel's tactile cellおよびRuffini's ending)であり,圧を受けると,その刺激が持続する限り,求心インパルスを発射するからslowly-adapting receptorとよばれる.二点識別検査はこの受容器の感覚円の大きさとその分布密度を検査する方法である.刺激された2つの受容器の間に刺激を受けない1つ以上の受容器が介在するときに,大脳皮脳は2点を局在をもつて識別する.指頭の二点識別能は2mm以下であるから,その感覚円の直径は1mm以下である.第2の受容器は断続的圧刺激すなわち振動を感知するmechanoreceptor(Meissner's corpuscleおよびPacinian corpuscle)である.この受容器はたまねぎのような層状構造を有しており,圧刺激を加えた当初には求心インパルスを発射するが,速かに順応してインパルス発射が止まり,圧を除いたときに再びインパルスを発射する.
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