Japanese
English
特集 感覚情報の処理機構
脊椎動物網膜の情報処理機構
Visual information processing in the vertebrate retina
御手洗 玄洋
1
Genyo MITARAI
1
1名古屋大学環境医学研究所
1Research Institute of Environmental Medicine, Nagoya University
pp.575-585
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903412
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
網膜はわずか300ミクロンの厚さの中に,視細胞から視神経節細胞にいたる複雑な機構をいれて,受容からその符号化までの高度な処理を行なっている器官である。
最近,その構成要素のすべてから細胞内記録が成功し27,48,53,54,57),節前神経細胞群の応答は,視神経のインパルスとは画然と区別されるアナログ的なものであることが明確になった。これは非常な進歩で,ガラス微小電極内に色素を入れ,反応の記録観察ののち色素を注入してその細胞を同定するというマーキング法の確立に負うところが大きい19,28,29,31)。筆者はリチウムカルミンを充たした電極を用いて,早くより網膜S電位の起源の決定を行なったが,いま改良された種々の方法が網膜に適用され,神経回路の分析に有力な手段となろうとしている。このことは他方,シナプスの微細形態学的研究を刺激し,それによる機能的解釈を促して,電気的応答と,その形態との対応が,ようやく網膜内情報処理機構の研究に定着するようになった。そこで,ここではこの方面に関する現状をまとめ,今後の問題点をさぐってみることにした。
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.