Japanese
English
特集 感覚情報の処理機構
網膜における色識別機構について
Retinal mechanisms of color discrimination
渡辺 宏助
1
Kosuke WATANABE
1
1東京女子医科大学第1生理学教室
1Department of Physiology, Tokyo Women's Medical College
pp.586-596
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903413
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はじめに
いわゆる可視光線は下限が380〜400nmから上限が760〜800nmにわたる波長範囲の電磁波で,波長によって異なる色の感覚を生ぜしめる。しかも人間の色識別の能力はかなり高く,たとえばナトリウムランプの589.0nmと589.6nmの2本の輝線スペクトルの色を区別できるほどである。このような色識別能がどんな機構で行なわれるかは古くから興味の対象となって,多くの色覚に関する学説が提唱されてきた。その中でもっとも代表的なのがYoung-Helmholtzの3色説とHeringの反対色説であって,両者の間にさかんな論争が展開されたのであった。
3色説は,1801年にYoungが初めて唱え,のち1852年にHelmholtzが発展させたもので,赤,緑および青にそれぞれ最大感度をもつ3種類の受容体を仮定し,網膜に入った光が各受容体に起こす応答の強さの割合によって色の感覚が決まるというものである。これに対して,1876年Heringの提起した反対色説では,色覚の基本として白—黒,赤—緑,および黄—青の要素を考え,それぞれの分解により白,赤あるいは黄の感覚を生じ,逆に合成により黒,緑あるいは青の感覚を生じるというのである。
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