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特集 神経病理—第12回日本神経病理学会学術研究会より
シンポジウム—脳の発達とその障害
Ⅱ.胎生期における脳障害
幼小児期脳障害—二,三の先天性代謝異常の脳病変
Brain demage due to inborn errors of metabolism: A neuropathological study
鴨下 重彦
1
Shigehiko KAMOSHITA
1
1東京大学医学部小児科学教室
1Department of Pediatrics, University of Tokyo
pp.438-446
発行日 1972年6月10日
Published Date 1972/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903397
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はじめに
先天性代謝異常は一般にまれなものと考えられているが,幼小児期における脳障害の原因として占める割合はきわめて大きい。手近な例をあげれば,まず脂質代謝異常としての種々のlipidoses,なかんずくsphingolipidosesは小児期の神経変性疾患として最も重要なものであり,phenylketonuriaを初めとする数多くのアミノ酸代謝異常は,精神薄弱や痙攣性疾患の重要な原因である。さらに,ムコ多糖蓄積症としてのHurler-Hunter症候群(gargoylismなど)はよく知られており,糖質代謝異常としては,グリコーゲン蓄積症の各型,galactosemia,hypoglycemiaなどをあげることができ,いずれも乳児期あるいは小児期に,重篤な脳病変を生ずるものである。
本稿では,筆者がこれまでに経験した症例の中から,先天性代謝異常に属すると考えられ,かつその本態がまだはっきりしないか,あるいは日本では剖検報告例が比較的少ないものを選び,脳病理を中心に概説することとする。すでに原著として発表済みのものもあるので参照されることを希望する1〜4)。
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