シンポジウム—小脳
小脳の構造について(二,三の問題)
小川 鼎三
1
1東京大学
pp.143-145
発行日 1956年12月1日
Published Date 1956/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901552
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
小脳の解剖学について近年とくにオスロ大学のヤンセン,ブローダル両教授とその門下の人々が活撥に研究しておる。最近,その教室の業績集ともいうべきAspects of Cerebellar Anatomyと題する400頁余りの立派な本を贈られたので,それを一読し,私が以前に小脳の解剖学を勉強したときの結果と比較して少しくお話する。
この業績集をみて,ヤンセン教授らの主な目的の一つが,近年とくに英米の生理学者が中心になつて,小脳の前葉内の機能局在について論じているが,それが解剖学の上から説明がつくかどうかを定めようとするにあることがわかる。つまりエードリアン以来,前葉のなかで後肢の中枢が前方に,前肢の中枢がそれより後方にあり,顔の中枢は更に後ろで単小葉のところにあると云われている。この局在説はずつと以前にボルクが比較解剖学の立場から述べたものと大いに食いちがつている。ヤンセン教授らの結論では現在の解剖学の知識ではエードリアンの説もボルクの説もとうてい説明することができない。従つて小脳について解剖学と生理学とが話がよく合つて進みうるにはなお道が遠いといつて嘆いているのである。
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.