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特集 脳の奇形と発生
生後早期における性ホルモンの視床下部に及ぼす影響
Neonatal influence of sex hormones on the developing hypothalamus
新井 康允
1
Yasumasa ARAI
1
1順天堂大学医学部第2解剖学教室
1Dept. of Anatomy, Juntendo Univ. School of Medicine
pp.364-368
発行日 1972年4月10日
Published Date 1972/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903388
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出生前後の動物に性ホルモンを投与した場合,量や期間によってその効果は異なることがあるが,成体では見ることのできないことが起ることが多い。そのあるものは想像以上に深刻でさえある。中枢神経系に対する性ホルモンの効果も生理的なものから薬理学的・病理学的なものまで,成体では可逆的であるのに出生前後の時期では概して不可逆的である。
下垂体ゴナドトロピン(GTH)の分泌様式は雌では周期的に変動して性周期を形成するのに反して,雄では普通著しい変動はおこらないのが特徴である。この性周期の有無によって代表される内分泌学的雌雄型の分化は(少なくともネズミなどでは)出生前後における性ホルモンの生理的レベルでの働きの最も重要なものと考えられる。シロネズミでは出生前後のごく短い期間に性中枢になるべき部分(おそらく視床下部)が性ステロイドホルモン,主としてアンドロジェンの誘導的な働きの影響をうけるのかどうかが鍵であって,新生雄ネズミでは出生後2〜3日の睾丸はすでにアンドロジェンを分泌する能力を持っており性中枢になるべき部分がこのアンドロジェンの誘導作用を受けると性周期を持たない雄型に分化するのに反して,新生雌ネズミでは卵巣はこの期間にまだ性ステロイドホルモンの合成能力が十分そなわっていないので,性ホルモンの誘導作用を受けずに性中枢の発生がそのまま進んでしまい性周期のある性中枢をもつことになるわけである。
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