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特集 第7回脳のシンポジウム
主題—慢性進行性神経疾患の中から
実験的麻疹脳炎—亜急性硬化性汎脳炎との対比において
Experimental measles encephalitis in comparison with subacute sclerosing panencephalitis
山本 達也
1
Tatsuya YAMAMOTO
1
1東京大学医学部脳研究所病理部
1Department of Neuropathology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.146-150
発行日 1972年2月1日
Published Date 1972/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903360
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1930年代に端を発した亜急性硬化性汎脳炎(SSPE)の研究は,さまざまな歴史的経緯をたどつた後,1969年その脳から麻疹ウイルスが分離されたことにより一つの転機を迎えた1)。それまで病因に主な関心があつたのに代つて,今後は感染の生成機序に追究の目が向けられよう。wild strainの麻疹ウイルスは一部の動物を除くと脳にほとんど親和性をもたないので,この株を使つて麻疹脳炎を実験的に作るには困難がある。しかしこのウイルスを培養細胞や動物脳に継代してゆくと,その途中に向神経性を示す変異株の得られることがある2〜4)。われわれの行なつているマウスの麻疹脳炎1,3,5)はこの種のウイルスを川いたもので,ここではその成績の一部とそこに含まれた若干の問題をSSPEとの対比において述べたい。
このウイルスを生まれたばかりのマウスの脳内に接種して数日すると,大脳海馬の神経細胞がほぼ選択的に感染を受ける。ウイルス増殖がそこで行なわれていることは螢光抗体法によつて確かめられる。初め顆粒状のウイルス抗原が少量細胞質の中に散在しているが,この螢光は時とともに増量して1週頃には細かいまたはやや荒い粒状の光を放つて,細胞質内に多数集積するようになる。なかには後で述べる巨細胞内にあると思われる大型の集団となつた螢光像を認めることもある。細胞核内は黒く抜けて見え,そのなかに螢光はない。
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