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特集 第6回脳のシンポジウム
主題—日本における神経化学
ニューロンの生化学
Biochemistry of the Neuron
佐武 明
1
Mei Satake
1
1新潟大学脳研究所神経化学部門
1Brain Rescarch Institute, Niigata University
pp.323-331
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903240
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ニューロンが中枢神経系の複雑な機能の主役を演ずる素子であることは近年発達した電子顕微鏡による観察および微小電極法による電位測定によつて明瞭となつてきましたが,この重要な素子の特性である興奮伝導,伝達の性質,記憶に関与する性質などの本態と目されるニューロンの化学構成,構成物質の物理化学的性質,代謝等の研究は,残念ながらまだ始まつたばかりといえる。その原因は,いわゆる超微量定量法を用いて神経系統の研究を行なつている先達1)が指摘しているように,主として中枢神経系の複雑な解剖構成によるもので,たとえば哺乳動物脳では神経細胞体の脳内に占める容積は数%に過ぎず,脳全体あるいはその局所の生化学的分析結果と神経細胞体あるいは神経細胞のそれとを結びつけて考えるわけにはいかない。もしも神経細胞に脳全体での分析結果と逆の方向の変化がおきている可能性があつてもそれを知ることは難しい。すなわち,現在まで主として行なわれて来た神経化学的方法ではニューロンの生化学的特異性を明らかにすることは難しく,より直接的な方法,すなわち,神経細胞を分離,分析することが必要となつてくる。
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