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治療の目的で行なわれた大脳半球摘除について,私どもがラットを材料とした実験を始めた動機は三つで,その第一は,基底核も含めて大脳半球を摘除された患児の脱落症状が,あまりにも見られなさ過ぎるし,術前に見られた治り難い癲癇と情緒,知能の欠陥が著しく改善された事実を示された19)ことによって,神経機能の半球局在,lateralizationの現象を含めて,動物大脳が両半球からなっていることの意義に疑問を持ったこと。第二の動機は,神経系の可塑的な面,たとえば記憶,学習の本態を物質レベルで認識しようとする従来の研究は,可塑的機能に関与する脳の場所の同定が不確実であったことに加えて,記憶,学習成立に必須かつ記憶,学習に特異的な物質の同定が失敗に終っていて,とても納得行く結果を示しうるものではなかった。私どもは,大脳半球摘除は,以下に述べる理由で,上記の問題に一つの示唆を与える手段となりうると考えた。すなわち,動物神経組織に大脳半球摘除ほどの大きな侵襲を加えても,もし残存神経組織にわずかの変化しか認められないものならば,記憶,学習のために必要な,おそらくは僅少であろう特異的刺激によっては,容易に検出できるような物質レベルでの変化は起こらぬであろうこと,逆に言えば,記憶,学習成立のために必要であろうわずかの刺激でも,物質レベルの変化が認められるならば,大幅な脳の可塑性を要求されるであろう大脳半球摘除によっては,明確な物質変化を認めうるであろう。
Abstract
The central nervous tissues of adult Wistar rats hemispherectomized soon after their birth were analysed biochemically.
DNA content stayed unchanged in all regions examined except the spinal cord suggesting lack of neurogenesis.
Small but statistically significant increases in the content of cholesterol, cerebroside+sulfatide and colchicine-binding protein were revealed. They may suggest increases of myelin and axon in the brain stem and in other brain regions.
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