特集 シナプス Ⅰ
司会総括
清水 信夫
1
1大阪大学医学部高次神経研究施設
pp.735
発行日 1970年3月25日
Published Date 1970/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903076
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脳の化学構築の知見は,第2次大戦後組織化学の勃興により多数の物質,酵素の証明が組織切片上において可能となるに及んで,飛躍的に増大した。その結果,脳各部における代謝,機能の特長,相異が組織構造と関連して理解されるようになつた。これらの成績の中で重要なことは,いわゆるneuropil(神経細胞体間にある網様構造)が代謝,機能の面できわめて活性に富むことが明らかとなつたことである。たとえば,好気的代謝の指標となるSD,cytochrome oxidase,刺激伝達に重要な酵素Ach Eなどは神経細胞体よりもneuropilにおいてより活溌である。しかし光学レベルの概念であるneuropilとそこにおける物質の局在では真の機能的意義の解決は不可能である。このような状勢下で電子顕微鏡と組織化学との結合によつて,微細構造上における物質分布を求める試みがなされ,次第に成功をおさめつつある。かくしてシナプスにおける化学構成(chemical synaptology)の知見が神経機能の解釈に重要な寄与をなし始めたものと思われる。
このシンポジウムに述べられる3題はシナプス領域における代謝,伝達に関する酵素,物質についての報告であり,興味ありかつ重要な成績と思われる。
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