特集 展望
動物の行動の神経機構
今村 護郞
1,2
1東京大学文学部心理学研究室
2東京大学文学部脳研究所時実研究室
pp.232-248
発行日 1960年1月1日
Published Date 1960/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901732
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従来,動物の行動は主として動物学者や心理学者たちによつて研究されてきた。この学問の発達の跡を辿つてみると,初期の生気論,目的論,擬人論あるいは素朴な機械論などの域をようやく脱してしだいに客観的な観察と実験に基づく自然科学としての立場を堅持するようになつてきた。そして現在,動物の行動の研究に2つの主要な方向を区別することができる。その1つは動物学者によるもので,一定の状態にある動物に特定の行動を解発させるのに必要な有効刺激―サイン刺激―を規定することから,主として本能的行動を理解しようとするゆき方であつて実験習性学(ethology)とよばれるものである90),153),154)。
他の1つは,比較心理学者によるもので,人間の行動を理解するための一助として行動のいろいろな側面を動物についてしらべようとするゆき方であり,主としてネズミやサルなどの動物を使い,本能(instinct),動機づけ(motivation),知覚(perception),学習(learning)その他いろいろの側面から行動を研究している66),109),149),150),159))。
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