特集 錐体外路系・Ⅱ
Ballism
荒木 淑郞
1
,
黑岩 義五郞
1
1九州大学医学部勝木内科
1The Second Dept. of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Kyu-shu Universtity
pp.35-46
発行日 1959年11月1日
Published Date 1959/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901719
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I.まえがき
Ballismという言葉は,Latinのballistaから語源を発している。ギリシヤ語でβαλλεινと云われ"to throw"投げるという意味である。臨床神経経学が観察を土台として,病的状態を解釈する学問であるならば,これ程,標的となりうるに当を得た疾患は無かろう。片側の上下肢が,夫々肩関節,股関節以下の筋群で突発的に収縮し,投げ,打ち,曲げ,回転するという奇妙な非律動的盲目運動が,強力,迅速,且つ粗大に間断なく,連続的に現われている患者を見たならば,Hemiballismという診断はたちどこるにつくからである。我国に於ては,これ迄に本疾患の報告例が僅少で,臨床例として牧1)が,臨床病理例として佐々2),冲中3)高畑4)等の発表例4例があるに過ぎない。本疾患を実際に見る機会に接した人は勿論であるが,たとえ見る機会を持たながつた人でも,本疾患の映画を見たり,本や又は人から説明されろと,その特有奇妙な運動は必らず忘れえざる印象となつて,実際に遭遇した場合,容易に診断を確定する手助けとなりうる。先ず症例を述べよう。
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