- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.緒言
線條體は古くより錐體外路系の重要な中枢とされている。そして古典的な神經病學者,1)Vogts, 2)Foerster, 3)A. Jacob, 4)Spatz等により線條體の症候群というものが知られて來た。Jacobは線條體症候群として 1)不全麻痺,2)運動の協調の障碍(Inkoordination), 3.) Akinese, 4)振顫,5)小細胞の變化は舞踏病,大細胞の變化は筋硬直,6)小兒の腦ではAthetose等を擧げている。FoersterもAthetotische Striatum Sy-ndromeに就いて述べ,又Pallidum Syndromeとして硬直,振顫等を伴うParkinsonismusの症状を擧げている。Vogtsは線條體に大理石樣のStatus marmoratusが存する時はAthetoseが見られたと云う。猪瀨は淡蒼球の病變でAth-etose樣運動をみた。
然し一方Wilson5)(1914)はClarkの装置で猿のレンズ核を破壞しても驚く程僅少な神經症状を認めたにすぎず,又一側のレンズ核を大きく破壞したが3週間の經過では舞踏病,Atheose,硬直等は認める事は出來なかつた。F. H. Lewy6)(1923)は猿で兩側のレンズ核を外科用のメスで破壞して,振顫,硬直を見たというが,解剖所見を述べてないのでその價値は少ない。Liddell(1940)は猫で大腦核を破壞して,反對側の肢に輕い永續性の筋Tonus増加を認め,又Ranson7)は同樣の實驗で殆んど著明な神經症状を伴わないという。即ち動物實驗では大腦核を破壞しても舞踏病,Athetose,硬直の如き症状は殆んど出現しない。その後最近生理學的,電氣生理學的に大腦核の機能が漸時明らかにされつつあるが,人腦の臨床病理については未だ明らかでない點が少くない。
吾々は浴風會(醫長尼子富士郞)に於いて觀察しえた線條體に病變を有する症例に就いて茲に検討を行つた。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.