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特集 第1回国際神経科学会展望・2
多発性硬化症と脱髄疾患
Elvin A.Kabat:実験的急性散在性脳脊髄炎の免疫化学的機序,並びにそれの多発性硬化症との関係
Immunochemical Mechanism in Experimental Acute Disseminated Encephalomyelitis and, their Relation to Multiple Sclerosis
椿 忠雄
1
1東大脳研
pp.633-637
発行日 1958年4月30日
Published Date 1958/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901632
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脳組織を猿に注射することにより,脱髄性急性散在性脳脊髄炎をおこすというRivers等,Ferraro及びJervisの研究以来,この疾患の発現機序,並びにそれと人間の散在性脳脊髓炎及び多発性硬化症(以下M.S.と略記)との関連の可能性につき注目される様になった。IsabelMorgan及び演者等は1946年,夫々独立に,脳組織を乳剤として,これにlanolin,paraffin油及び結核死菌を併用し,唯少数回の注射のみで,この疾患を確実に,且つ早期におこさせることに成功した。疾患は均一な脳組織の注射によつておこされ又外科的に切除した猿の前頭葉を乳剤として,その猿自身に注射することによつてもおこされるのである。かかることは,他の多くの種属についても発現させることが出来るのであり,これはアレルギー性脳脊髄炎として知られている。FreundAdjuvantを併用するという方法は,例えば末梢神経を用いて,末梢神経炎をおこすという様に,広範囲に適用されて来た。これについて数多くの綜説が最近現われている。
この10年余りの間,実験的方法による疾患は,研究方法として非常に有用ではあったが,発病機序に対する完全な解明の進歩は,甚だ失望的である。これは次の二つの線に沿つての進歩が見られなかつたことが本質的原因である。
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