Japanese
English
綜説
動物に於ける条件反射の脳波的研究
Electroencephalographic Studies of Conditioning in Animals.
吉井 直三郞
1
N. Yosii
1
1大阪大学第二生理学教室
1Dept. of Second Physiology, University of Osaka
pp.301-316
発行日 1957年10月5日
Published Date 1957/10/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901595
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〔I〕
条件反射又は条件行動は大脳機能の研究に用いられて相当な成績を挙げてきたが,これらの研究から得られた知見は,大脳の統御の下にある末梢効果器の示す反応から推察された大脳活動に過ぎないことを知つておらねばならぬ。パヴロフは唯一の条件反射創始者であると見做されないが,条件反射研究に生涯の30年間を捧げることによつて,多数の重要な行動原理を吾々に提示することが出来た。彼は中枢神経系の諸性質について推測し,条件付けを条件刺激に反応する皮質代表部と無条件刺激に反応するそれとの間の機能的統合に帰し,唾液分泌の如き末梢反応から中枢に於ける興奮,制止,拡延,集中等々の概念を作り上げた。又,中枢相互の間の結合については,例えば音を食餌性唾液分泌に対する条件刺激として組合せたとき,「一時的」"temporary"又は「条件」結合"conditioned"connectionが「聴覚中枢」と「食餌中枢」との間に形成されるが,このような結合は「皮質内」"intracortical"に生ずると考えたのである。
彼のモザイク説は極めて巧みに構成され,非常にもつともらしい様相を示しているが,上述した如く大脳皮質の活動を直接に証明したのではなかつたから,条件反射に関心を抱く人々から,その直接の証明が待望されていたことは想像に難くない。
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