脳のはなし・4
無条件反射(1)
千葉 康則
1
1法政大学
pp.82-83
発行日 1967年7月1日
Published Date 1967/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913218
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〔4〕無条件反射−1
脳の中の路
脳のはたらきは信号通過による反射機能が中心だということになると,脳は単に信号が通過するところということになってしまう。そう考えることはいかにも味気なく思われる。しかし,信号が通過するとはいっても,それはたとえば,口に食物が入ると足が上がるとか,足にトゲがささると唾液が出るとかというように,でたらめに通過するわけではなく,ある刺激に対して生体として最も適当な反射が起こるように信号が通過するのである。そこで,神経生理学の最も重要な研究課題は,一つは脳の中にどのような路がついているかということであり,他は信号はいかに交通整理されるかということである。交通整理に関しては,さきに述べたように,主として制止の問題としてさかんに研究が行なわれている。
ところで,脳の中の路だが,これは大きく2種類に分けられる。その一つは生まれつき脳の中にある(遺伝的)路であり,そのほかに,生後,脳の中につくられる路がある。そうして,生まれつきの路を信号が通過して起こる反射を無条件反射とよんでいる。口の中に食物が入って唾液が分泌される(唾液反射)とか,足にトゲがささって足が上がる(屈曲反射)というような反射はすべて無条件反射である。つまり,一般に反射としてよく知られているようなものはたいてい無条件反射なのである。
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