Japanese
English
展望
脳の定位固定装置
Stereotaxic Apparatus
時実 利彦
1
T. Tokizane
1
1東大
1Institute of Brain Research, school of Medicine, University of Tokyo.
pp.317-326
発行日 1957年10月5日
Published Date 1957/10/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901596
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1.まえがき
現在わが国で,私達脳生理の研究に従事しているものが最も切実にその必要を感じているものの一つは脳の定位固定装置であろう。以前はともかくとして,直接私達の目がとどく範囲の脳の色々の部位を切除したり,破壊したり,刺激したり或は電気的活動を導出,記録することだけでは満足できず,皮質下或は脳の深部にある種々の核や線維の破壊,刺激或は電気的活動の導出,記録などが強く要請されている現今の研究段階において,時間的にも経済的にも試行錯誤的な実験が自由に許されないわが国では特に種々の実験動物に使用できる定位固定装置の必要性がしみじみと感ぜられる次第である。
歴史的にみると,脳の定位固定装置の誕生は1908年に発表されたSir Victor Horsley & R.H.Clarke24)の研究にはじまる。彼等は猿や猫の小脳の核に限局した損傷を加えて運動機能に及ぼす影響をみるために脳を定位的に固定する装置を考案した。即ち,彼等は猿や猫の脳はその形及び大きさの個体差が極めてすくないことに目をつけ,頭部を予め定められた方式で固定すれげ脳は常に一定の位置関係で固定されることになり従つてそのように固定された脳では種々の核や線維の位置が三次元の坐標点として表現できることを明らかにした。
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