シンポジウム—脱髄性疾患
所謂球後視束炎症例の臨床的検討並に脱髄性疾患を疑わしむる症例について
植木 幸明
1,2
,
植村 五朗
1,2
1新潟大学医学部脳神経外科教室
2新潟大学脳研究室
pp.112-120
発行日 1956年12月1日
Published Date 1956/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901543
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
多発性硬化症(以下M.S.と略記)の初発症状として,種々の眼症状,殊に所謂球後視東炎(以下N.r.b.と略記)が重要視されて来ている。即ち欧米に於ては既にN.r.b.の原因としてM.S.が最も多く挙げられておつたが本邦に於ても比較的最近にいたり,桑島はN.r.b.を脳炎又は脊髄炎と同等乃至は相似の概念に於て把握すべきであるとしてM.S.の診断にN.r.b.の意義を高く評価し,又沖中等や祖父江はN.r.b.の中に視束脊髄炎と診断し得るものゝある事を報告している。この様に現在N.r.b.はM.S.を含む脱髄性疾患によるものが大部分であるとの考が有力となりつゝある様であるので,我々は試みに当教室に於ける入院患者の中からN.r.b.を有する症例を択び出し,それらについて臨牀的統計的観察を行つてみた。又更に之等の症例の中から脱髄性疾患を思わせる症状を呈した例について表示し少しく述べてみたいと思う。但しここで述べる資料は,調査が殆んど過去の病牀日誌について為された事や脱髄性疾患の面よりみた時記載不充分の日誌がある事等から必ずしも完壁な正確さを期し得ないのであるが,脳神経外科臨牀の立場からN.r.b.を検討してみる事も必ずしも無意義ではないと思うのである。
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.