シンポジウム—脱髄性疾患
多発硬化の臨床的鑑別について
野村 章恒
1
,
藤田 千尋
1
,
津金沢 政治
1
,
友良 健
1
,
長谷川 和夫
1
,
湯原 喬一
1
1慈惠会医科大学神経科
pp.121-124
発行日 1956年12月1日
Published Date 1956/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901544
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近年脱髄疾患は神経学の中心課題となりつつあるが,私達は如何にして多発硬化症候群を呈する症例を収集しつつあるかという多発硬化発見の方法について語りたい。
多発硬化の総説に述べられている鑑別すべき疾患の種類は,神経梅毒,中枢神経腫瘍,遺伝性小脳失調症,蜘網膜炎,ウイルソン氏仮性硬化,脳動脈硬化,パーキンソン氏病,ヒステリー,癲癇などがあげられている。私共精神神経科領域の患者の診療に従事しつつあるものが多発硬化症候群を呈する症例に遭遇する機会は次の三つの場合である。即ち第1に,日常多数取扱う神経症様の症状を主訴として訪れるものから身体的症候を詳細に追究すること,第2に,眼科の外来を訪れる患者の球後視束炎と診断されたものは必ず神経科に回してもらつて神経学的に精密な検査を行なうこと,第3には整形外科の領域で限局性蜘網膜炎と診断されたものなど脊椎及び脊髄疾患から鑑別し出す方法である。従来われわれが報告した多発硬化症候群を呈するものと認めたものは3例にすぎなかつたがその後症例の追加と共に一括表示すると第1表の如くである。この表中の上部3例については従来報告したがその後の経過は後に詳述するが今日までの迫加症例は4例であり,最後の第8例は臨床的観察期間中は多発硬化を疑わしめられたのであつたが死後剖見によつて脳橋部の膿瘍と決定したものであつた。
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