Japanese
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特集 神経系疾患の診断法・2
神経症の診断—特に一般臨床における鑑別を中心に
The Diagnosis of Neurosis.: specially on Differential Diagnosis in General Practice
中川 四郎
1
Shiro Nakagawa
1
1群馬大学
1Department of Neuropsychiatry. Faculty of Medicine, Univ, of Gunma
pp.109-125
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901506
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I.神経症診断のための前提
およそ疾患の臨床診断の過程は,一定の手技に基いて患者の観察から得られるさまざまの所見を手懸りとして,これを既知の幾つかの症状と対応させながら,さらに詳細な検索を行い,それらの総合の中で一定の症候群乃至は疾患像を把握し,同時にその症状または状態の出現した機制(病因)を解明し,それらを最もよく反映するものとして,従来の臨床経験や医学理論に基いて病名を選び,診療の方針をうち立てることである。
従つてこのような診断が確定されるためには,その病名となつた疾患概念の確立が前提とされなければならない。もしその概念が充分に普遍妥当なものでないならば,病名は単に個々の学者の分類学上の興味に止まり,正しい診療の指針とはなり難いであろう。もちろん各時代の医学上の知見や技術の不完全さと制約のために,まだその病因の解明には達しない多くの疾患があり,目下使用されている病名の中にも,単に症候群乃至は状態像として把握されるに止まるものと,ある程度病因の明確なものとがある。しかし医学の絶え間ない進歩に伴い,一方では従来の疾患概念が一層深められると共に,他方ではそれが動揺し変化しつつあるのが見られる。一度確立された病名でも,その概念の歴史的な変動によつて,その包含する内容は異つてくることは当然である。
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