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注意そのものは観察不可能な精神現象である。観察不可能な現象を研究するためには,まずその現象を定義しなければならない。しかし定義するためにはその現象に関する知識,研究が必要となる。このジレンマに対してわれわれがとりうる手段は,注意(に関連していると思われる現象)によって生じる観察可能な変化を列挙し,その特性,メカニズムを明らかにすることである。これまでの注意に関する研究で明らかになっていることは,注意によって同一の刺激に対する(1)反応が増大し,(2)情報処理が促進される,ということである。(1)反応の増大は,刺激に対する生理的な反応の増強や,閾値の低下という形で観察可能であり,(2)情報処理の促進は,たとえば,刺激に対する反応時間の短縮という形で観察することができる。逆の言い方をすれば,他のすべての条件が一定であるにもかかわらず,このような観察可能な変化が生じた場合,それを注意と定義する。ここでは視覚的な注意によって生じる一種の錯視を用いて,主に空間的な視覚情報処理の促進という面に焦点をあてて注意という現象の特性を明らかにし,次に体性感覚に対する注意,それから視覚と体性感覚という異なる感覚間での注意の相互作用について述べ,最後に注意のメカニズムに関して若干の考察を行ってみたい。
Three types of attention are explained in this review ; visual spatial attention, somatosensory attention, and cross modal attention between the visual and somatosensory modality. First, temporal and spatial aspects of visual attention are revealed by studies using the so-called “illusory line motion” : if an observer's attention is directed, for example, to the right and a line is presented in the center, the line is perceived to be drawn from the right to the left, although the line is drawn instantane-ously.
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