第47回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/鹿児島 《シンポジウム》臨床神経生理学とリハビリテーション―座長/木村 彰男・岡島 康友
体性感覚誘発事象関連電位N140と注意障害
羽田 康司
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1帝京大学医学部附属溝口病院リハビリテーション科
pp.837-842
発行日 2010年12月18日
Published Date 2010/12/18
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はじめに
1965年にSuttonら1)が初めてP300を記録して以来,事象関連電位は認知機能を反映するものとして注目を集めるようになった.事象関連電位研究の多くは聴覚刺激や視覚刺激に対する反応を中心にすすめられてきたが,体性感覚刺激でも同様に誘発が可能である.体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential:SEP)は,外界の感覚刺激に依存した受動的な脳の電位変動に由来する外因性成分と,外界の感覚刺激に対する被験者の認知機能を反映して変動する内因性電位である内因性成分に分けられる.N20などの短潜時成分が認知機能には直接影響を受けない外因性とされているのに対し,それ以降の中~長期成分は選択的注意や認知に関係する内因性成分が中心と考えられ事象関連電位として研究されている.またSEPの各成分発生源については短潜時成分に関してはnear-field potentialおよびfar-field potentialの概念に基づきほぼ特定されているのに対し,P300に対する発生源を推測している研究は散見されるものの中~長潜時成分に関しては未知の状態である.
そうした内因性成分が中心である体性感覚誘発事象関連電位(S-ERP)成分のうち140ms付近に頂点潜時を有する陰性波はN140と呼ばれ,選択的注意に関連していると考えられている.本稿では,健常者におけるS-ERP N140成分に関する知見を述べ,脳損傷患者の認知機能評価への臨床応用の可能性について言及する.
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