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I.はじめに
Hokin夫妻のハト膵臓の実験によって分泌現象とリン脂質代謝の関連が示唆され,このことが今日の情報伝達における膜リン脂質のかかわりを示す最初の知見であった。当時は総リン脂質画分への32P取込みが亢進するということで,“リン脂質効果”と呼ばれたが,その後,そのリン脂質がフォスファチジルイノシトール(PI),フォスファチジン酸(PA)と同定され,PI分解で生じたPAが再びPIに戻るという,いわゆる“PIサイクル”説の基本概念ができた。ついで,このPIサイクルの生理的意義がMichell(1975)の総説1)の中で仮説も混えて見事にまとめられ,一応のコンセンサスを得ていた。細胞刺激によるPI分解がCa2+流入を誘起するというのが骨子であった。換言すれば,PIが分解するとセカンドメッセンジャーのCa2+が増えるというCa2+ゲート説である。これに加え,PI分解でできるジアシルグリセロール(DG)によってプロテインキナーゼC(PKC)が活性化されることが西塚らによって明らかにされ,このDGもセカンドメッセンジャーとして位置づけられた2)。1980年代に至り,PIに代わってPIP2が重要視されるようになった。それは細胞刺激に連係した初発反応はPIP2分解であるという新しい考えであった。そして,その分解産物のイノシトール(1,4,5)トリスリン酸(IP3)が細胞内Ca2+動員因子として働き,DGにつづく新たなセカンドメッセンジャーとして加わった3)。本稿の中心課題でもあるイノシトールリン酸(IP)にもさまざまな誘導体が存在し,その構造と生成機構が注目されている。分泌に始まった“PIレスポンス”が,他の細胞機能とも広く関連していることが明らかにされ,最近では高次神経機能の学習・記憶にも,部分的にせよかかわっていると推測されている。
The responses of cells to physiological extracellular stimuli, such as peptide hormones, growth factors, autacoids and neurotransmitters, are mediated by a variety of messenger molecules. For adenylate cyclase-coupled receptors, transduction of the receptor occupancy signal via GTP-binding proteins has been characterized. For Ca2+-coupled receptors, an analogous type of transduction process in the plasma membrane occurs to induce activation of phospholipase C (PLC) leading to Ca2+ mobilization.
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