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I.はじめに
睡眠時無呼吸症候群sleep apnea syndromeは,不眠症や昼間に耐えがたい居眠りを繰り返す過眠症などの原因の一つであるばかりではなく,この症候群においては,高血圧症や狭心症などの循環器疾患の合併が多いことが知られている。この症候群の発症頻度は,一般人口中では0.3%,成人においては0.5~3%と推定されており,最近になってとくに注目されるようになった病態である。睡眠時無呼吸症候群の名称は,Guilleminaultら(1976a)9)によって提唱されたものである。彼らは,鼻および口を介する呼吸気流の停止が10秒間以上にわたって続く場合を無呼吸apneaと規定し,7時間の夜間睡眠中に30回以上の無呼吸が出現するとき,あるいは睡眠1時間当りに出現する無呼吸の回数(apnea index;AI)が5以上のときに,睡眠時無呼吸症候群と判定することを提唱した。睡眠時無呼吸の病因としては,上気道の狭窄をきたす種々の原因が知られているが(田代ら,1989)35),中枢神経障害によるとする説もある(Kurtzら,1978;Lugaresiら,1978;Onalら,1982;Sullivanら,1984)15,17,23,33)。しかし中枢神経障害によるとする説においても,その障害部位は臨床的にはほとんど解明されておらず,また神経病理学的にも障害の局在部位は明らかにされていない。
この症候群の患者においては,先に述べたごとく,その経過中に高血圧症を合併することがきわめて多いことが知られている。筆者らの調査研究(田代,1989)36)では,睡眠時無呼吸症候群の患者における高血圧症の合併率は約70%であった。その場合の高血圧症は,睡眠時無呼吸の治療により改善したとするいくつかの報告がある(Coccagnaら,1972;Fletcherら,1987;Guilleminaultら,1976b,1980;Mottaら,1978)5,7,10,11,21)。これらのことより,睡眠時無呼吸症候群においては,睡眠時の無呼吸が高血圧症の発症の原因,あるいは発症促進因子として重要な役割を果たしているものと考えられる。一方,いわゆる本態性高血圧症の患者における睡眠時無呼吸症候群の合併率は,筆者らの調査研究(田代,1989)36)では28.1%(男33.3%,女18.2%)とかなりの高率であった。このことは,いわゆる本態性高血圧症の発症機序の解明においても,睡眠時無呼吸症候群の病態生理の解明がきわめて重要であることを意味している。しかし睡眠時無呼吸症候群における高血圧症の発症機序は,未だ解明されていない。
Hypertension is frequently found in patients with sleep apnea syndrome (SAS), but the mechanism inducing hypertension in such patients is not yet known. In 15 SAS patients and in 6 controls, plasma levels of various pressor substances (noradrenaline, adrenaline, dopamine, serotonin, renin, aldosterone, and cortisol) were measured right after awakening in the morning and the 24 hour urinary output of noradrenaline (NA) was also measured. All subjects were admitted to the hospital, and were not allowed to take or consume any drugs, alcohol, tobacco, caffeine or vanilla 4 to 7 days prior to the measure-ment of the pressor substances.
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