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2001年9月,千葉県で日本初の牛海綿状脳症(以下,BSE)に罹患した乳牛が発見され,日本中にBSEに対する懸念が広がっている。その一因は,変異型CJD(variant CJD)と呼称されるヒトのプリオン病が,BSEに由来することに起因する。残念ながら,vCJDを含むプリオン病は,現時点では有効な治療法がなく,100%致死性の疾患であるといわざるを得ない。治療法開発のストラテジーとして筆者らは,(1)感染型プリオンの元となる正常型プリオンを分解する方法,(2)ドミナントネガティブ効果を有する防御型プリオン蛋白の利用,(3)抗プリオン抗体の応用,を試みている。これらのストラテジーには,プリオン蛋白分解酵素や,分子シャペロン様の機能を有する分子としてその存在が想定されている,X因子の同定が密接に絡む。「プリオン」という造語が誕生して以来20年が経過したが,これらを含めたプリオン蛋白関連分子は,未だ一つも同定されていないといっても過言ではない。「もうそろそろ新しいプレイヤーが同定されなければ」との思いを抱くのは,私どもだけではないであろう。
はじめに
プリオン病ないし伝達性海綿状脳症(transmissible spongiform encephalopathy:TSE)は,プリオン蛋白のコンフォメーション変化によるとされる,主として中枢神経系を障害する疾患である(表)1)。この疾患には,ヒトのクールー,クロイツフェルト=ヤコブ病(CJD),ゲルストマン症候群(GSS),家族性致死性不眠症(FFI),ヒツジのスクレイピー,ウシ海綿状脳症(BSE)伝播性ミンク脳症(TME)などが含まれるが,この中でスクレイピーが最も古くから認識されていたこともあり,現在ではヒツジのみならず,感染性を持つプリオン蛋白を一般に,PrPスクレイピー(PrPSc)と呼称している。英国におけるBSEの流行とヒトへの感染(variant CJD)に引き続き,わが国においても昨年BSE罹患牛が,欧州地域以外で初めてのBSEが発見された。さらに,乾燥硬膜移植による医原性CJD等の問題も含め,近年プリオン病は大きな注目を集めている。
Prion protein exists in two different isoforms, a normal cellular isoform(PrPC)and an abnormal infectious isoform(PrPSc), the latter is a causative agent of prion disease such as mad cow disease and Creutzfeldt-Jakob disease. Amino acid sequences of PrPCand PrPScare identical, but their conformations are rather different;PrPCrich in nonβ-sheet vs. PrPScrich inβ-sheet isoform.
Since the protein only theory in PrPScreplication is quite unique in biology, our prion research focuses on further understanding such an unprecedented mechanism by identifying auxiliary factor(s)other than PrPCand PrPSc. Our current targets are, (1)yet unidentified protease cleaving PrPCduring its normal metabolic pathway, and(2)unknown host-specific factor(s)involved in PrPScformation. These studies also help us to develop“therapeutics and prevention methods”in prion disease.
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