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副作用を評価するということ
副作用には、客観的に観察・評価できるものと、患者の主観的体験を情報として聞くことでしか評価できないものとがある。
先日筆者が経験したエピソードから本稿のテーマを考えてゆきたい。この女性患者は、術後治療のためにパクリタキセルの投与を受けていた。パクリタキセルの代表的な副作用には末梢神経障害があるため、いつものように、患者と話をする前にこう聞いた。「指先や足の裏とかに、しびれとかなにか違和感などはないですか?」。患者は「うーん……しびれとかは、ないかな」と返答したため、末梢神経障害はCTCAEの評価ではGrade 1程度で、重篤な有害事象ではないと評価した。しばらく別の話題で日常生活の話をしていたときに、たまたま話題が朝食の準備の話になった。「……そうそう、朝はパン食なんですけど、トーストしたパンは危険ですよね。昔だったらひょいっとつまんでお皿に載せられていたんですけど、もう最近は熱いわ痛いわで、お箸で挟んでお皿に乗っけてるんです。パンを落っことすと、つまんで元に戻すのが本当に大変。うっかり物を落とすことも、最近増えちゃって。でも、お箸でカリカリのトーストを挟むのも難しくて、ぐにゃってなっちゃう」。こう笑顔で話す患者の隣にいた別の患者が、この患者の話に呼応するように話し始めた。「あるある。トーストしたパンは痛いよね。あれね、シリコンの付いたトングで挟むと力もいらないし、ぐにゃってなりにくいよ」「あー、それ便利そう、どこに売ってるの?」「私は料理するときに、最近はなんでもこのトングを使うようにしているの。菜箸だと長いし、指先が思うように言うこと聞かないから力が入りにくいし……」「そうそう!」
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