ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・2
「死亡診断書」を書く時に最も重要なことは?
森田 沙斗武
1
1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
pp.586-589
発行日 2023年5月15日
Published Date 2023/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204290
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Case
患者:85歳、男性。妻と死別し、息子夫婦と同居。
既往歴:誤嚥性肺炎、軽度の認知症、ラクナ梗塞
病歴:食事介助は必要のないADLであったが、物忘れが多い、辻褄が合わない言動などがあり精査を受けたところ、陳旧性のラクナ梗塞と脳萎縮を指摘された。
発熱を契機に外来受診し、誤嚥性肺炎と診断。呼吸状態も悪く、緊急入院となった。1週間の絶食および抗菌薬治療にて徐々に改善。解熱し呼吸状態も安定したことから、入院8日目から嚥下食を少量から開始していた。
入院10日目朝の検温時に、ベッド上で心肺停止しているのを発見。心肺蘇生処置にて蘇生せず、死亡確認となった。ベッドサイドに、院内のコンビニエンスストアで自ら購入したと思われるおにぎりや唐揚げの袋を認め、また救急処置時に多量の米飯や唐揚げを口腔内に認めた。そのため主治医は、死因を「窒息」として死亡診断書を発行した(表1)。
翌日、役所から「窒息死は外因死であるが、異状死の届出はなされているか?」と問い合わせがあった。院内の医療安全部に確認したところ、念のため警察に届出を提出したほうがよいと言われて実施した。警察から主治医および遺族が事情聴取を受け、警察により事件性なしと判断されたものの、無用な騒動であった。
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