特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文
【教養編】
科学哲学|額に汗して考え抜く—二元論的思考を根底から覆す「ことだま論」
野家 啓一
1,2
1東北大学
2立命館大学
キーワード:
大森荘蔵
,
ことだま
,
声振り
,
立ち現われ
,
二元論的構図
,
同一体制
Keyword:
大森荘蔵
,
ことだま
,
声振り
,
立ち現われ
,
二元論的構図
,
同一体制
pp.556-559
発行日 2020年5月15日
Published Date 2020/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429202593
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❶「ことだま論」との出会い
私は東北大学の理学部物理学科を卒業後、進路を「科学哲学」に変更し、東京大学大学院の大森荘蔵先生の門を叩いた。物理学から科学哲学へと転向(?)したのは、もともと物理学への興味が「空間に果てはあるのか?」や「時間に始まりはあるのか?」などの哲学的疑問から出発していたからである。研究目標としたのは、エルンスト・マッハ(オーストリアの物理学者、1838〜1916)の「感覚論(要素一元論)」とフッサール(オーストリアの哲学者、1859〜1938)の現象学を手がかりに、「科学的認識」の哲学的基礎づけを行うことであった。
大学院の講義や演習を通じて大森先生から徹底して叩き込まれたのは、哲学とは「額に汗して自分の頭で考え抜く」営みに尽きること、そして得られた知見は「台所言葉で書く」こと、すなわち家庭内の茶の間で通用するような平易な言葉で表現すること、この2つである。
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