2頁の知識
“汗”
伊藤 眞次
1
1名大
pp.28-29
発行日 1953年7月15日
Published Date 1953/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909364
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われわれの体温はおよそ37℃に一定して保たれている。このことは生体がつねに一樣な生活機能を営んでいくために極めて重要なことである。これは体内での熱の産生と放散とが平均しておればこそ一定に保たれるのであつて,もし環境温度が変つたり,あるいははげしい運動をして熱の産生がふえるような場合にはこの平衝が破れて体温に変動がおこるおそれがある。このとき生体はすぐそれに適応して,産熱量または放熱量を変えて,体温の動搖を未然にふせぐことができる。熱の産生は周囲の温度がいちじるしく低くなつたときに増加するが,高温でとくに減ることがないから,高温環境での体温の調節は主として熱の放散によつて行われる。
体温は主として皮膚から放散されるが,これに3つの形式,輻射と伝導及び対流と蒸発とがある。その割合は室温20℃のとき大体輻射65%,伝導,対流15%,蒸発20%であるが,輻射や伝導,対流による放熱は皮膚の温度と外気の温度とのちがいに比例するから,もし気温が皮膚の温度と同じになると,これらの形式による放熱は全く行われなくなつて,ただ蒸発だけで体熱が放散されることになる。そこで汗が出て蒸発水量を増すわけである。また運動をするときには体内に大量の熱ができるから,急速な放熱を必要とし,汗が分泌されて蒸発による体熱の放散をますわけである。
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