Japanese
English
特集 意識と脳
脳と心の二元論の意義
The brain-mind problem
養老 孟司
1
Takeshi Yoro
1
1東京大学医学部解剖学教室
pp.64-66
発行日 1992年2月15日
Published Date 1992/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900318
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.二元論と社会
「脳と心の二元論」の意義を論ぜよ,というのが私に与えられたテーマである。二元論の意義は社会的には明白であろう。トマス・ヘンリー・ハックスレーと,ウィルバフォース大司教の,進化に関する公開論争以降,西欧においては,教会は「心」,科学は「モノ」と,基本的に科学と教会とがその領域を分け,いわば「棲みわける」ことができたのである。
もちろん,わが国では事情が違う。最近,私が調べたところでは,日本の哲学者はすべて,人によっては暗黙のうちに心身一元論をとっていると思われる。一元論の一方の極は唯物論であり,他方の極は唯心論である。この国では後者が優越する。
Copyright © 1992, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.