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Case1
「血管炎」ミミック症例❶
患者:56歳、男性
主訴:「足にブツブツが出た」
現病歴:4カ月ほど前から、たびたび発熱を繰り返していた。そのたびに近医を受診し、経口抗菌薬を内服し改善していた。1カ月ほど前に胸膜痛があり、CTにて胸膜直下の陰影を指摘された。この時も抗菌薬を内服し、症状は改善した。数日前から下腿を中心とした紫斑が出てきており、近医を受診したところANCA(抗好中球細胞質抗体)が陽性であり、膠原病科を紹介受診した。副鼻腔炎症状や鼻出血などはなかった。
身体所見:眼瞼結膜に点状出血なし。Janeway lesionやOsler結節なし。下腿を中心に、2〜3mm大の紫斑を多数認める。紫斑は浸潤を触れ、周囲に発赤を認める。鼻粘膜には特に異常なく、口腔内は齲歯が目立つ。呼吸音は清。心雑音を認めない。腹部は軽度の脾腫を認める以外に特記すべきことなく、関節炎も認めない。末梢神経障害の徴候もない。
検査結果:血液;WBC2,300/μL、Hb9.8g/dL、Ht30%、Plt18×104/μL、Cre1.03mg/dL、肝酵素(AST、ALT)に異常なし。血沈78mm/時、CRP7.8mg/dL。補体;C3 65mg/dL、C4 12mg/dL。抗体;ANA40倍、RF陽性(40IU/L)、PR3-ANCA陽性。尿定性;潜血(3+)、蛋白(1+)。胸部CT;結節影など肺の陰影なし。
経過:下腿にみられた紫斑は触知可能であり、典型的な皮膚の「小型血管炎」を想起させるものであった。顕微鏡的血尿がみられており、尿沈査を鏡検したところ、赤血球円柱を認め、腎炎をきたしている可能性が高く、入院して精査・加療を行うこととなった。
血液培養を採取のうえ、静注抗菌薬に加えて、高用量のステロイドを静注で開始。経胸壁心エコーでは、明らかな疣贅などは認めなかった。腎炎の精査目的に腎生検を行おうとしたが、入院2日目に血液培養陽性の報告があり、後日Streptococcus mutansが同定された。経食道心エコーを施行したところ、僧房弁に小さな疣贅を認めた。「亜急性感染性心内膜炎」に伴う二次性の腎炎および皮膚の小型血管炎の診断となった。その後、抗菌薬によって症状は改善した。
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