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はじめに
腸閉塞を超音波で診断?
「腸閉塞」と「イレウス」という用語がありますが、本邦と欧米では使い方が異なります。本邦では両者は同じ意味で使用されることが多いのですが、欧米では前者は通過障害をきたす腸管閉塞(intestinal obstruction)、後者は腸管麻痺(paralytic ileus)として区別されます1、2)。外来で主に問題になるのは前者であり、Point-of-Care超音波先進国である欧米諸国と整合性をはかるために、ここでは両者を区別し、前者「腸閉塞」を中心に、Point-of-Care超音波について考えてみたいと思います。
「えっ、腸閉塞を超音波で診断?」と思わされる方がいらっしゃるかもしれません。もしくは「なんとなく知っているけれども、実際はまず単純X線で診断して、それからCTで詳しく調べるに決まってるでしょ」というご意見が大半かもしれません。実は、腸閉塞の超音波診断の歴史は古く、1970年代頃から臨床研究と応用が行われ3、4)、2000年代初頭までに、外科や放射線科から存在診断や質的評価に関する報告がされてきました5〜12)。病歴と身体所見から腸閉塞が疑われた場合に、初期評価として考慮される単純X線と超音波の比較検討が行われましたが、実は「超音波のほうが精度は高い」という結果が主流となっています6〜8、10)。超音波による存在診断は、「腸液の充満した拡張腸管の描出」によってなされますが、拡張した腸管内にガスが多いと診断が困難になります9)。一方、単純X線はその逆で、ガスが貯留した拡張腸管像をもって存在診断が可能になりますが、一般に腸液の充満した拡張腸管は同定できません。「超音波と単純X線、どちらが診断能が高いか?」といった議論は必要ですが、存在診断に関して、両者は相補の関係にあることも念頭に置くべきだと思います。もっとも閉塞部位の特定やその原因診断10、12)、また絞扼の有無4、5、7)については、超音波が有用であることが示されており、単純X線よりも超音波のほうが優れています。また絞扼性を始め重症度の高い腸閉塞では、腹水の評価は重要ですが1、4、5、7、11)、超音波では容易に描出されます。
*本論文中、[▶動画]マークにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月30日まで)。
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