特集 レアだけど重要な「痛み」の原因─システム1診断学
【部位別システム1診断アプローチ】
腹痛でレア疾患のシステム1診断
高田 史門
1
1市立奈良病院総合診療科
キーワード:
突然発症の腹痛
,
急性腸間膜虚血症
,
非閉塞性腸管虚血
Keyword:
突然発症の腹痛
,
急性腸間膜虚血症
,
非閉塞性腸管虚血
pp.1024-1026
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200387
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Case
突然発症の上腹部痛で「非閉塞性腸管虚血(NOMI)」をきたした症例
患者:97歳,女性.
主訴:上腹部痛,嘔吐.
現病歴:高齢ながら,畑仕事などもこなしていたADL自立の女性.既往歴は高血圧程度で,腹部手術歴はなかった.
来院当日,夕食摂取した約1時間後に突然発症の上腹部痛があり,同時に少量の食物残渣様の嘔吐を認めた.腹痛は突然生じ,心窩部に限局的で移動性はなく,間欠的であった.
検査結果・経過:来院時バイタルサイン上特記事項はなく,重篤感は見られなかった.上腹部に圧痛を認めていたが,腹膜刺激徴候はなかった.血液検査ではWBC 8,980/μl,CRP 0.01mg/dlと炎症反応正常値内であり,肝胆道系酵素の上昇などの異常所見は認めなかった.原因として胃腸炎を疑われたが,疼痛が持続痛に変化し,増悪してきたため,腹部単純CTを撮像.肝内に門脈気腫の所見あり,上腸間膜静脈内にair(図1)が見られた.腸管壊死の可能性を考慮して腹部造影CTを撮像,単純CTと同様に上腸間膜静脈内にairが見られたが,上腸間膜動脈や腹腔動脈に造影欠損は認めなかった.全身状態は良好なことから,いったん保存的に経過観察入院となったが,入院翌朝,発熱や腹膜刺激徴候の出現,代謝性アシドーシスの悪化を認めたため,緊急手術となった.
術中所見:淡血性の腹水貯留と,回腸に腸管壊死を認め,約1m 30cmの腸管切除を行った.
術後経過は良好であり,術後19日目に退院となった.
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