みるトレ
Case 86
岩崎 靖
1
1愛知医科大学加齢医科学研究所
pp.265-266
発行日 2015年3月15日
Published Date 2015/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200155
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Case 86
患者:55歳,女性.
既往歴・家族歴:特記事項なし.
現病歴:もともと社交的で明るい性格であったが,3年ほど前から自己中心的な行動が目立ち,家人と口論するようになった.1年ほど前から近所を何時間も歩き回り,スーパーの衣類や食品を無断で持ち帰るようになった.近所の家や倉庫に無断で入り,しばしば警察沙汰となったため,家族に連れられて受診した.
臨床所見:意識は清明であった.「今日はどうされましたか?」と質問すると,しばらく黙っていた後に突然「富士の高嶺に雪は降りつつ〜」と脈絡のない返答をした.「今日は何曜日ですか?」と質問すると,「そうやなあ,水曜や」と正答し,次に「どこから来ましたか?」と質問すると「水曜や,水曜や」と答え,「お名前を教えてください」と質問すると「水曜や,水曜,水曜」と答えた.血圧測定のために腕に触れると「何するの!」と大声を出し,詳細な神経学的診察はできなかった.座位では左手で左膝を叩き続けていたが,急に椅子から立ち上がって窓の外を眺めたり,診察室内を歩き回ったりした.失調やパーキンソニズムは明らかでなかった.頭部単純CT像(図1a, b)を示す.
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