膵囊胞の軽度増大を契機に診断された膵上皮内癌の1例

A case of pancreatic carcinoma in situ with a enlarged pancreatic cystic lesion.

要旨

　患者は80歳代，女性．横行結腸癌術後の経過観察目的で腹部CTを施行し，膵尾部の主膵管拡張を認めたため，精査加療目的にて当科を紹介となった．MRCPにて膵体部の主膵管に限局性の狭窄，および周囲の小囊胞，尾側膵管の軽度拡張を認めたが，EUSでは明らかな腫瘤は描出されなかった．内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)カテーテル留置下による膵液細胞診を施行したが，classⅢであったため経過観察としていた．しかし，MRCPの再検にて狭窄部周囲の小囊胞にわずかな増大を認めたため，ENPDカテーテル留置下の膵液細胞診を再検した．結果，classⅣと判定されたため，膵上皮内癌と診断，膵体尾部切除術を施行した．病理組織学的所見よりadenocarcinoma in situと診断された．