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はじめに
画像診断技術の向上によって,従来は指摘し得なかった微小な病変の検出が可能となり,肝胆膵領域においても比較的限局した転移性病変が,原発巣に対する治療前,もしくは治療後のフォローアップ中に診断される場合がある.
その場合にどのような治療方針を立てるか.癌の遠隔転移は,全身病化が顕在化した進行病期であるが,転移には特定の臓器に好んで転移を起こす臓器親和性が存在するため,その特質と原発巣の生物学的悪性度を見極めて治療方針を決定する必要がある.例えば,大腸癌は肝への臓器親和性が高く,大腸癌由来転移性肝癌の治療は,局所療法である外科治療が有効である.一方,同じ消化器癌であっても,膵癌由来の転移性肝癌に対する手術適応はない.
転移性肝癌に関しては,頻度が多くエビデンスレベルの高い報告が多数認められているため,積極的治療の対象となる原発巣はある程度明らかにされてきている.しかし,胆膵に限局した転移は非常に稀であるため,治療効果に関する十分なエビデンスはなく,原発巣の予後と治療技術のバランスを考慮して,症例ごとに治療法が選択されているのが現状であろう.
新薬の開発や放射線・手術技術の向上により,ひと昔前には有効な手段がないとされていた転移性腫瘍の治療方針は日々大きく変貌しており,最善の治療法を選択するためには,最新の情報にcatch upする必要がある.本稿では,肝胆膵領域への他臓器からの転移性腫瘍について,その疫学を述べ,有効とされる治療方針について,手術治療を中心に最新の知見に基づき概説する.肝転移については,治療効果が期待できる原発巣について最新データをレビューし,胆膵転移の治療に関しては,比較的母数の多い報告を簡単にまとめる.
本特集が日常診療において,稀な胆膵領域の転移性腫瘍に遭遇した際の道標にもなれば幸いである.
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