肝外発育傾向が著明で術前診断に苦慮した多発性肝嚢胞腺癌の1切除例

A Resected Case of Multiple Biliary Cystadenocarcinoma With a Remarkable Extrahepatic Growth Which was Difficult to Diagnose Preoperatively

　74歳・女性．右季肋部痛にて近医を受診し，胆嚢結石症および肝の嚢胞性病変を指摘され当科紹介となった．肝S₆，S₅を中心として肝内外に多発する平滑な壁構造を伴う嚢胞であり，多発性単純肝嚢胞，慢性胆嚢炎合併胆嚢結石症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術とともに肝外性に発育した嚢胞の1つに対して嚢胞壁の天蓋切除術を施行した．5か月後，右側腹部痛が再発し，腫瘤を触知，腹部CTでS₆の肝外性に発育する肝嚢胞の再燃と増大を認めたため，開腹のうえ嚢胞全摘術を施行した．病理組織では一部周囲にも浸潤している嚢胞腺癌であった．画像上，壁の肥厚を認めない嚢胞であっても，多発症例では増殖能が旺盛なことから，癌の可能性も念頭に置いた治療法の採用が必要と考えられた．