- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
CT angiographyは造影剤を急速に静注後,造影剤が血管内に留まっている時期に撮像し,三次元処理することで血管を選択的に描出する方法である.CT angiographyは全身の血管に応用されているが,従来のシングルスライスCTによるCT angiographyでは必ずしも十分な画質が得られているとは言い難かった.マルチスライスCTでは薄いスライス厚で広い範囲を短い時間で撮像可能でありCT angiographyの画質も目覚ましく向上する.従来のシングルスライスCTに比較してマルチスライスCTでは撮像時問を59%短縮することが可能にもかかわらず,スライス厚は40%薄く,速度でのゲインは2.6倍,撮像効率は4.1倍,造影剤の節約効果は57%であったと報告されている1).
腹部動脈でも他の部位同様,CT angiographyでの画質が著しく向上し,臨床的に十分使えるようになった.CT angiographyによって膵癌の手術前検査2,3や動注療法,塞栓術のマッピングに診断的に十分なクオリティーの画像が得られる.1mm以下の細かな血管の情報を得ることは難しいが,手術に必要な情報については十分であり,血管と病変の関係も直接描出可能である.これまで診断目的で行われていた血管造影はもはや全く不要となったと言っても過言ではない.またマルチスライスCTによるCT angi―ographyでは腫瘍と門脈や肝静脈の関係を明瞭に描出することも可能である.門脈や肝静脈の情報は肝切除に際しては有用な情報を提供し,肝移植やTIPSの術前検査としても有用である4).門脈の描出は通常の血管造影よりむしろ優れていると言えよう.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.