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本誌第3巻1号の特集「肝細胞癌との鑑別を要する良性腫瘍一画像と病理」を興味深く読みました.ここで取り挙げられている疾患はいずれも肝細胞癌との鑑別が困難であることが多く,日常診療上臨床医にとって,手術を含む治療方針の選択において注意を要するからであります.その中で「北川清秀,川森康博,松岡利彦,山端輝夫.虚血性偽小葉壊死.消化器画像2001;3:107-110」について疑問となるところがありましたのでお尋ね致します.この中で著者らは胆嚢に接した肝表面にMRIでT1,T2とも高信号を示す15mm大抵エコー結節を提示しています.この結節は造影CTを含むCTでは描出されず,血管造影で動脈相で円形に,静脈相ではリング状に腫瘍濃染を示し,CTAPでは内部は血流欠損域として描出されています.そして病理学的検討より虚血性偽小葉壊死と診断されています.ただ肝硬変における偽小葉壊死を診断するためには,消化管大量出血,ショックや糖尿病ケトアシドーシスの既往や,繰り返す肝塞栓術などの誘因が必要と考えますが,この症例にはそのような既往歴の記載はありません.反対に肝細胞癌の自然壊死(spontaneous necrosis)を論じた文献には特に大きな既往や誘因がなく自然壊死がみられたことが報告されています1~4).しかもこの症例では,背景にC型肝硬変があったとの記載はありますが,腫瘍マーカーの動き,とりわけ切除前後の動きについての記載がなされていません.前述の肝細胞癌の自然壊死症例についての文献の中で,Imaokaら1)は6,609ng/mlであったAFP値が無治療にて62ng/mlまで低下し,切除により正常化した症例を報告し,Ozekiら4)も切除前後で1,050ng/mlあったAFP値が正常化した症例を報告しています.
また,著者らも述べていますように,この症例は,Tlの高信号の原因は不明であるとしても,画像上は肝細胞癌の所見と矛盾しない所見です.
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