連載 始める人と関わる人のための「消化器病理診断の基礎知識」[5]
「消化管:病理診断は消化管に始まり消化管に…」
福嶋 敬宜
1
,
二村 聡
2
1ジョンズ・ホプキンス大学医学研究所病理部
2東京慈恵会医科大学病理学講座
pp.909-917
発行日 2003年11月15日
Published Date 2003/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427100404
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特殊な病院でない限り,病理医の診断業務の中で最も多い検体が消化管標本であることはまず間違いありません.多くの病理医が来る日も来る日も消化管病変の診断に時間を費やしているといってもよいでしょう.病理医の中にはこれを煩わしく思っている人もいないわけではありません.たしかにルーチン検体の一つ一つの診断とレポート作成は“作業”のようなものだともいえるからです.
しかし,このように豊富に消化管の標本があることは特に病理診断のトレーニングを始めた者にとっては歓迎すべきことなのです.なぜなら消化管の標本には病理診断の基本が沢山詰まっているからです.日本の病理医のほとんどは消化管の標本を通して病理診断のABCを習得していくといってもいいはずです.手術摘出標本の基本的な扱いや固定法,肉眼観察の実際,組織標本の見方の手順と評価方法などなど.一旦基礎が出来でしまえば,それは他臓器の病理診断にも広く応用できます.腫瘍診断の場合,臓器や病変によってそれぞれの診断基準は違っても,組織構築や細胞の異常所見を読んでいくプロセスは変わりませんし,炎症像の捉え方もその基本は変わらないのです.
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