書評
「精神科シンプトマトロジー—症状学入門 心の形をどう捉え,どう理解するか」—内海 健,兼本浩祐【編】
渡邉 博幸
1
1木村病院
pp.283
発行日 2022年3月1日
Published Date 2022/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202025
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本書は,病者との丹念で真摯なやり取りによって,その苦悩に輪郭を与え,丁寧な支援の足がかりとすることを長年大切に実践してきた治療者たちが,源流に遡った「精神症状」の解説だけでなく,彼らの臨床の心構えや大切な視点も交えて,わかりやすく説き起こし,多くの医療に関わる人たちと共有することを願って編まれています。
「症状学(シンプトマトロジー)」と聞いて,皆さんは何を連想しますか。昔話で恐縮ですが,精神科では,週に1回,Terminologie(テルミノロギー)という研修医向けの講義がありました。用語のみならず,その説明文までドイツ語でしたので,翻訳するのに精一杯,もちろん,入局1カ月ほどの青二才で,実際診療として経験していないものですから,訳してもちんぷんかんぷんで,そのときの講義内容をよく覚えておりません。しかし,講義が終わると,先輩や同僚合わせて8名ぐらいで一緒に夕飯となるのですが,普段近寄りがたい先輩方がとても冗舌になり,さっきのいかめしくゴツゴツしたドイツ語の塊を砕いて,「十八番」の苦労話や自慢話を交えて話し出し,その楽しさやワクワクした感じだけがいまなお心に残っています。
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