書評
―神庭重信・内海 健 編―「うつ」の構造
広瀬 徹也
1
1公益財団法人神経研究所附属晴和病院
pp.650
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102206
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本書は高い志を持った二人の編者を含めた8人のその分野のトップクラスの執筆陣によるうつ病論である。その分野とは臨床精神病理学,医療人類学,精神分析学,神経薬理化学,臨床精神薬理学,文化神経科学と多岐にわたり,Ⅰ。現代社会とうつ病Ⅱ。疾病概念を問うⅢ。神経生物学の展開の三部構成から成る。
さて,冒頭の高い志とは編者の一人神庭重信氏の序文の次の言葉に端的に示されている。「・・うつ病が,人類に普遍で不変なマインドの領域から,文化による修飾を強く受けるメンタリティに及ぶ領域で生まれる病だからである。・・言い換えればうつ病論とは,ヒトの脳を探究することであり,さらには日本の社会・文化にも言及することである」。本書は神庭氏の狙いが太い軸となって,その周りを他の著者の論文がらせん状に上昇して高い頂きに達しているように思える。
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