今月の主題 末梢性ニューロパチー
頻度の多いニューロパチー
糖尿病性ニューロパチー
山村 安弘
1
,
鬼頭 昭三
2
1広島大学医学部・第3内科
2広島大学医学部・内科
pp.188-190
発行日 1980年2月10日
Published Date 1980/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216396
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
糖尿病に合併する神経障害の存在は古くから知られている.この中には脳および脊髄病変に基づく神経症も包含されるが,糖尿病とより本質的な関連を有すると考えられているのは,ここにとりあげる末梢性ニューロパチーである.糖尿病者間における末梢性ニューロパチーの頻度は報告者によりまちまちであるが,これはひとつには神経学的検索の精緻さによるものであり,いまひとつには糖尿病自体のとらえ方,ないしは糖尿病診断基準の多様性にもかかわっている.さらに,そこにみられる神経障害が糖尿病の存在となんらかの関係があるのか,または単なる加齢によるニューロパチーをみているにすぎないのかを鑑別することも必ずしも容易でない.したがって,実際には糖尿病者にみられた末梢神経障害を糖尿病性ニューロパチーと呼んでいる場合が多い.
頻度は,前述のごとく糖尿病者の5%という報告から95%という冲中の報告まであって,まちまちである.最近の研究では対称性のpolyneuropathyは約25%の症例に存在するが,電気生理学的な末梢神経の異常はほぼ全例にみいだされる,といわれる.男女差はほとんどなく,40歳代より高齢に多い.糖尿病の罹病期間の長いもの,糖尿病のコントロールの不十分なものに多くみられる.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.