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今月の表紙
河村 満
1
,
岡本 保
2
,
菊池 雷太
3
1昭和大学病院附属東病院
2富坂診療所
3汐田総合病院神経内科
pp.1118-1119
発行日 2016年9月1日
Published Date 2016/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200561
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モルヴァン(Augustin Morvan;1819-1897)という人物をご存知でしょうか。1819年に生まれた,シャルコー(Jean-Martin Charcot;1825-1893)と同時代のフランスの医師です。シャルコーがパリで活躍し,神経学の始祖として現在でも最も高名な神経学者であるのに対し,モルヴァンはブルターニュ地方ラニリスという,フランスの最西端の片田舎の臨床医で,あまり知られていません。しかし,素晴らしい神経学の業績を持ち,さらに地域の政治にまで関わった人物であるようです。
彼の神経学における業績は大きく3つあります。1つ目は,1875年に粘液水腫の症候の詳細を記載したことです。2つ目は,1883年に上肢の「paréso-analgésie」(麻痺-痛覚脱失症,モルヴァン病)と呼ばれる脊髄空洞症(モルヴァン自身は,脊髄空洞症とは考えませんでした)の神経症候を記載したことです。この疾患は当時フランスで大変な注目を浴びました。3つ目は,1890年に「chorée fibrillaire」(線維性舞踏病,モルヴァン症候群)を初めて記載したことです。当時は残念ながら,麻痺-痛覚脱失症ほど注目度は高くなかったようです。しかし近年,モルヴァン症候群は,電位依存性カリウムチャネルの免疫性障害に合併する,シナプス病理を持つ傍腫瘍性神経症候群として,非常に大きな関心が寄せられています。
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