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「現代の頭痛研究の父」1)ともいわれるウォルフ(Harold George Wolff;1898-1962)は1898年5月26日にニューヨークで生まれた。彼の父方の先祖はアルザス出身と言われている。ハーバード大学医学校で医学を学び,1923年にM.D.を取得した。医学校では神経科医のコブ(Stanley Cobb;1887-1968)に影響を受けたという。ルーズベルト病院などで臨床を学び,再びハーバード大学へ戻り,脳循環などの研究に携わった。1928~1929年にかけてオーストリアはグラーツのレヴィ(Otto Loewi;1873-1961)教授の研究室に学んだ。ちなみにレヴィは副交感神経のトランスミッターとしてアセチルコリンを発見したことで1936年にノーベル賞を授与されている。1930~1931年にはジョンズホプキンス大学精神科のマイヤー(Adolf Meyer;1866-1950)教授の研究室で学んだ。1932年にニューヨークにコーネル大学医学センターが開かれるとウォルフは神経科の部長に指名された。1940年にはコーネル大学医学部神経科の教授になり,1958年に患者から多額の寄付を受け,Anne Parrish Titzell Professor of Medicine in Neurologyに任命された。『Archives of Neurology』誌の編集長,米国神経学協会(American Neurological Association:ANA)の会長を歴任した。彼は生涯に539編の論文と14の書籍を発行した。その中にはのちに頭痛の聖書とまでいわれた本書『頭痛と他の頭部痛』の初版(1948年)が含まれている2)。
ウォルフが発見した頭痛のメカニズム,特に片頭痛のそれは,一世代を支配する理論であった。本書はその後,頭痛に関して最も権威のある書物とされ,彼の死後も『Wolff's Headache and Other Head Pain』として第8版(2008年)までオックスフォード大学出版から刊行されている。
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