書評
「誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた―重篤な疾患を見極める!」―岸田直樹 著
青木 眞
pp.685
発行日 2013年8月20日
Published Date 2013/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413103292
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本書は「風邪」診療と「不明熱」診療の距離が極めて近接していることをあらためて認識させる良書である。「風邪は万病のもと」というが,恐らく正確には万病は病初期,みな風邪のようにみえるということなのだと思う。言い換えれば問題の臓器も病因も不明なのである。“Harrison”の内科書で長らく感染症を担当したPetersdorfは「多くの病気が不明熱と名づけられている。それは医師が重要な所見を見逃し,無視するためである」と喝破した。これは評者が長らく指摘してきた「風邪」という診断名の乱用が問題臓器と病因の検討不足の表現である事実とも関連している。さらに外科学領域の古典ともいえる“Cope's Early Diagnosis of Acute Abdomen”が「胃腸炎という診断は,まだ診断できていない病態に名前を与える行為であることが多い」とコメントしていることも,胃腸炎と風邪の違いはあれど同じ性質の病根を扱っている。
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