Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
Ⅰ.パーキンソン病の病態生理のとらえ方の最近の変化と非運動症状
パーキンソン病(Parkinson disease:PD)は,その4大症候,すなわち振戦,固縮,無動,姿勢反射障害が示すとおり,錐体外路系障害による運動疾患として長い間認知されてきた。その病態生理も,黒質緻密相ドパミン含有神経細胞の変性を主病変とする疾患であり,ドパミン補充療法さえうまく行けばその治療は完遂すると考えるのが一般的であった。しかし,近年の研究により,黒質が障害されるはるか以前から,嗅覚,自律神経系などが障害され,徐々に脳幹をさかのぼるように病変が進み,黒質が障害されて初めて運動症状が出現するというBraak仮説が脚光を浴びることになった。この仮説では,病変の進行は黒質にとどまらず,さらに上行してMeynert核,扁桃体,大脳皮質と進み,知的機能低下や幻覚,妄想などをきたすとの推論がある。一方,たとえ孤発性PDであっても,その発症,進展形式は一律ではなく,α-シヌクレオパチーという観点からPDをみた場合,Lewy小体は皮質から下降するため精神症状が先行し,のちに運動症状が発現する場合があるとの考えもある。さらに,ドパミン系以外の神経伝達物質の異常がどのように関与するのかもほとんどわかっていない。
運動症状以外のこれらの症状は,患者のQOL(quality of life)低下の一因ともなっているばかりか,これらの症状を早期に発見することが早期治療につながるとも考えられつつある。PDの非運動症状はTable1のようにまとめられるが,本特集はテーマを「パーキンソン病の新しい側面」と題し,そのトピックスのみを述べることとする。したがって,非運動症状のすべてを網羅する特集ではないことをはじめにお断りしておく。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.