Japanese
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連載 神経学を作った100冊(30)
ウィリアム・ガワーズ「眼底鏡図譜」(1879)
One Hundred Books which Built up Neurology (30)-William Gowers "A manual and atlas of medical ophtahlmoscopy" (1879)
作田 学
1
1日本赤十字社医療センター神経内科
1Department of Neurology,Japanese Red Cross Medical Center
pp.722-723
発行日 2009年6月1日
Published Date 2009/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100511
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最近は眼底鏡の売れ行きが極端に悪いという。眼科医は備え付け型の大きな機械(ボンノスコープ)しか使わず,買うのは神経内科の医師ぐらいだそうである。また私自身,大学では医学部の学生に眼底鏡について1時間教える時間があるが,交替で見せてもついに見られずに終わってしまう学生もいる。見られなかった学生の大多数が,一生眼底鏡を見ることなく終わるのかもしれない。
見えるはずだと思っていてもなかなか見えない眼底を最初に見たのは,生理学者であり物理学者のヘルマン・ルートヴィヒ・フェルナンド・フォン・ヘルムホルツ (1821-1894)である。彼は1850年にベルリン物理学会で発表し,翌年の1851年に小著“Beschreibung eines Augen-Spiegels zur Untersuchung der Netzhaut im lebenden Auge. (Forstner, Berlin ,1851, 43pp)”(生きた目の網膜を検査するための検眼鏡の記述)を出版した。こののち,眼底鏡は眼科の世界において急速に取り入れられ,神経疾患の領域においてもクリフォード・アルバットの著書“On the Use of the Ophthalmoscope in Diseases of the Nervous System and of the Kidneys”が代表するように,眼底鏡を用いた報告がなされるようになった。そして,各種の神経疾患にみられる眼底所見について総合したのが,ガワーズによってまとめられた本書である(Fig.1)1)。このxii+352ページの書物は以下の3部に分れている。
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